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2002年度6月議会に「船橋市が中核市に移行する」という議案が提案されています。
船橋市は「中核市になれば、保健所業務などできることが増える」と良いことだけを宣伝していますが、
私たち日本共産党は「市民的な議論もせず、財源の保障もないのに、急ぐべきでない」と反対しています。
みなさんはどうお考えになりますか?ぜひご意見をお寄せ下さい。

以下は、6月4日に行われた総務委員会で日本共産党の金沢議員が討論した内容です。


中核市への移行に対する反対討論
 日本共産党は、中核市への移行を決める本議案に対し、反対する立場から討論を行います。
 まず始めに述べておきたいことは、日本共産党の基本的な立場です。
 わが党は、戦前の、地方自治がまだ存在しなかった時代から、国民が国の主人公であり、その実現のための制度保障として地方自治を主張してきました。戦後も、そして将来にわたっても、この立場で地方自治を拡充するために全力を尽くすものです。この立場から、中核市への移行を考えると、国からの事務権限の移譲が全く含まれないこの制度は、地方分権とはほど遠い不十分な制度だと考えます。しかし、千葉県からの権限移譲により、市民のくらしを守る施策を市民に最も近い行政が責任をもつということから、市民の健康や環境の保全に対して、これまでの事務を拡充できる可能性があり、中核市の移行自体に反対するものではありません。
 しかし、現時点での移行には、問題があり、急いで移行の手続きを行うべきではないと考えます。
 その第一の理由は、財源問題です。
 中核市への移行に伴い、新たに発生する法定移譲事務について、必要な経費はすべて、地方交付税によって措置されることが繰り返し説明されています。
 しかし、小泉内閣が示した「骨太の方針」では、国庫補助金および交付税の削減が示され5月21に開かれた第13回経済財政諮問会議で、この地方交付税制度そのものを見直すと首相から表明されました。そうでなくても、地方交付税は年々削減される方向にあり、2002年度では、国の交付金財源不足分を地方自治体の借金で補えという制度改悪も行われています。
 国と地方の財政のあり方が全く見通しできない状況が生まれています。
 「国の地方財政計画は毎年変更され、将来の財源の保障はない」という財政部長の答弁のとおりで、船橋市が中核市に移行した後、必要な経費がすべて交付税で措置をされるという保障は、全くありません。
 さらに、中核市移行後は、県からの支出金が減ることは確実で、その分も市の新たな負担となります。県の支出金については、法定移譲事務に関連するという理由で、県が行ってきた単独事業も市の負担とされる可能性も出ています。県は削減する方針であることを明らかにしています。
 この県単事業については、現在も協議中ということから、公表されている新たな財政負担の算定には含まれていません。中核市移行後には、現段階で予測していない負担が生じる可能性があります。
 新たな財政支出が必要になっても、それに対する財源を生み出せない場合は、市は財政難を理由に、市の事業の縮小、さらなる職員の削減、市民への負担増など、市民サービスを低下させる以外に選択の道はありません。財政の保障がないという問題は、市民サービスに直結する問題であり、あいまいなまま、放置するわけにはいかない問題です。
 この問題を未解決のまま計画を推進することは、燃料の補給計画なしに航海に出発するような、無謀なものであります。その船に50万を超える船橋市民を内容も知らせないで乗船させることに同意できるものではありません。
 二つ目は、移行の決定に対し、市民の意見が反映されないという問題です。
 財源の確保が不安定というのは、深刻な判断材料です。もし財源不足が生じれば、その場合には市民に新たな負担を求めるか。サービスを切り捨てるか、二者択一を市民に迫ることになり、市民にとってはいずれにしても望ましい選択ではありません。そのようなリスクのあるのがこの中核市への移行です。しかし、そのような客観的な情報は、市民には提供されていません。
 市政運営の重大な変更にあたり、市民的な議論と意見の集約が求められますが、その前提となる正確な情報の提供と、それに対する十分な説明は全く行われていません。
 中核市は地方分権の拡充であるといいながら、その主人公である地域住民は、議論に参加することさえできない状況です。
 三つ目は、市の体制の問題です。
 中核市の移行により、市の権限が増えることから、市民サービスの向上、総合的な環境保全、個性豊かな街づくりの推進がメリットとしてあげられています。
 このうち、権限の半分以上は保健所設置にかかわる事務であり、サービス向上を実現するためには、現在の実務をその専門性や事務量ともに継続するだけでなく、あらたな運用が期待されます。
 しかし、準備期間が短く、実態は実務の引継ぎが精一杯で、権限を活かせる取り組みを移行時から期待できる状況ではありません。
 保健所と保健センターが一元的に管理できることについても、具体的な中身については「研究中である」という福祉局長の答弁が出されています。
 保健所の業務はもちろん、環境行政においても専門性の高い業務がもとめられます。
 ところが、現在分かっているのは、保健所職員の内、どんな職種の県職員をどれだけ人数継続配置されるかも明確になっていないということです。
 もし、移行の過程で食中毒などの事件が発生したら、その場合の調査体制など一体どうなるのか、それも高瀬の食品コンビナートなどが発生源で広域的に影響が発生した場合など、現在の説明では全く不安であります。
 しかし、このことについても、「研修中・検討中」との説明だけであり、時間的な推移を考えるならば、不可能と結論づけざるを得ません。

 さらに、市が示してきた新たな事務に対応するための人員配置では61人の増員のように記載されていますが、一方で、国に示した資料では、市の職員は増員どころか、平成15年までの5年間で職員を264人削減する、と明記されています。
 これでは、事務量の増大を結局職員の労働強化か、あるいは民間への投げだし、そうでなければサービスそのものを止めるか、いずれにしても市民生活支援をおろそかにする以外に考えられないではないでしょうか。
 以上の理由により、この議案はいったん撤回し、財源の保障見通しが明確になった段階で再提出するよう求めます。この提案が認められないなら、本議案については、反対することが、市民への責任であることを強調し、反対討論とします。