ミニにゅうす 1087号 2024年11月11日

しのびよる下水道の民営化
ウォーターPPP 船橋市が導入を検討

 船橋市は自公政権がすすめる公共事業の民営化という方針に則り、下水道へのウォーターPPP導入を検討しています。今年度中に方針を整理し、導入決定の場合は来年度から制度設計と事業者選定に向けた手続きをすすめ、2028年度から開始します。
 ウォーターPPPは、公共施設の運営権を民間企業に売却する「コンセッション」の呼び水となるもので、政府は導入から10年後に原則としてコンセッションに移行するよう自治体に促しています。全国に先駆けて下水道にコンセッションを導入した浜松市では、水ビジネスの世界大手ヴェオリア社の日本法人が受け手となり、自身の関連企業に何億円もの工事を随意契約で発注するなど、業務内容や税金の流れが不透明になっています。
 コンセッションの契約期間は、20年から30年と長いのが特徴です。自治体職員の見識やスキルも低下しかねず、災害時に下水道の管理運営・復旧について誰も責任を負えないという最悪の事態を招きかねません。多額の役員報酬や株式配当のために利用料が高騰するなど、問題の大きさから、海外では再公営化をする自治体が増えています。
 日本共産党は9月17日、市議会で問題点を指摘し、ウォーターPPPについて市の認識を質しました。下水道部長は「国が推進するため検討している。市の技術職員数や市内業者に与える影響とかを考慮し、現在、コンセッションの導入は考えていない」と答えました。しかしウォーターPPPにおいても民営化は相当進みます。
 船橋市が検討をすすめる背景には、2027年度以降に汚水管改築時に国の交付金を受けるには、前年度までにウォーターPPP導入を決定しなければならないという条件があります。昨年度は約1億円の交付金が付いていました。自治体を脅す手法は地方自治に反しますが、市も抗議する気はないと明言しています。
 来年は市長選です。国民の暮らしも人権も脅かす自公政権に、総選挙では厳しい審判が下りました。国言いなりの市政もまた、抜本的な転換が求められます。

ちょっと待った!メディカルタウン構想看過できない3つの理由

 松戸徹市長が「メディカルタウン構想」と銘打って、推進役になっている「海老川上流地区土地区画整理事業」では、新たな問題がでてきています。

建設費に歯止めが利かない?

 9月18日、船橋市立医療センター等建て替え工事一般競争入札が中止になりました。入札参加者である「フジタ・ティーエスケー特定建設工事共同企業体」より辞退届が提出され、入札参加者が不在となったためです。
 辞退の理由は、「検討の結果、いただきました与条件では本件の履行が困難であるため」として詳細は不明。しかし、設計どおりに工事をすすめれば、この金額ではできないということだと推測されます。事業費はすでに約723億円(市のHPより)で、基本計画時の437億円から大幅に増額。どこまで増額になるのかわかりません。

治水の要「調整池」は大丈夫?

 この地域は、船橋市のハザードマップにも記載のある浸水想定地域であり、区域の大部分は軟弱地盤で液状化の危険があります。今年1月に行われた説明会では、洪水対策について実施時期が不確定の海老川調節池の暫定掘削や、調整池の排水はポンプで行うとしていますが、具体的な運用は県と協議中など、洪水対策は充分ではありません。
 しかも、医療センターへのアクセス道路沿いに建設予定の1号調整池は、液状化対策が行われていなかったことが判明して設計の見直しが行われ、工事が1年遅れました。工事事業者の液状化対策に対する認識が問われます。

能登半島地震の教訓は?

 首都圏直下型の地震が発生した際、震度6弱の地震が船橋市を襲うという想定です。
 9月1日に放映されたNHKスペシャルでは、軟弱地盤の上に立つ建物は、地震の揺れが増幅し、震度が1から2段階ぐらい高くなること、能登半島地震では、それによって杭基礎が建物から引きちぎられるという事態が生じたことが紹介されました。
 この地域では、震度5強ぐらいの地震での液状化対策を行うと組合が決めています。建築物の安全性については、民間事業者次第。能登半島地震の教訓は、この事業では活かされないのではと危惧されます。