あの街この町 No.232 2021年9・10月号

定例議会
コロナ禍深刻 今こそケアに手厚い市政を

 市長選挙後、第2回定例市議会が行われました。ワクチン接種やPCR検査、生活支援などの新型コロナ対策を中心とした補正予算案を審議。一般質問では海老川上流地区開発とその財政問題、生理の貧困対策を取り上げる質問が続きました。

不十分な「ワクチン・PCR検査・子育て給付」の補正予算

ワクチン

 ワクチン集団接種会場の設置費用や接種を行う医療機関への助成が盛り込まれました。しかし国からのワクチン供給が減らされ、7月15日には新規の接種予約を中止する事態となり、8月16日に個別接種の予約は再開しましたが、集団接種は中止したままです(8/17現在)。

PCR検査

 PCR検査費用で追加されたのは高齢者・障がい者施設職員の月1回(まん延防止等の期間は2週に1回)のみで、訪問介護職員は対象外と極めて不十分です。市中感染が広がる中、無症状でも希望すれば検査ができる体制が必要です。少なくとも保育所や学校、幼稚園で定期的な検査をすべきです。

子育て給付

 今回、低所得の子育て世帯(ひとり親世帯以外)への特別給付金が追加されました。5月のひとり親世帯への給付金に合わせて実施する国の制度です。ただ、今回は船橋市が国の制度に上乗せしないため、これまでより支給対象世帯が大幅に減ります。
 不十分な補正予算ではありましたが、日本共産党は賛成しました。

海老川上流地区開発の新駅 15億円も増額 一方で財源不足と住民脅し

 市長選挙後、海老川上流地区開発「メディカルタウン構想」における新駅設置の事業費が65億円になるとの報告が議会にありました。従来の50億円からいきなり15億円もの増額です。同開発への市負担は総額181億円にもなりました。
 この間、巨額の開発費捻出のため、「行革」として公共料金の値上げや福祉の削減が強行されました。市長はさらなる「行革」を進めながら、市民に増額を隠し、市長選を行ったのです。日本共産党による本会議での「市民をだました」という指摘に市長は「承服できない」と怒りをあらわにしましたが、隠したのは事実です。
 一方、市は議会に対し、今後10年間は毎年40億~80億円の財源が不足するという財政推計を示しました。これを受けて他会派の議員は本会議で、「公民館や児童ホームを指定管理にし、学校給食をセンター方式にしてでも、海老川上流地区のまちづくりを実施する覚悟か」と質問。市長は否定せず、教育や福祉を後退させてもすすめる姿勢です。
 しかも、市民生活を犠牲にして市費をつぎこむ海老川上流地区は、ハザードマップ洪水被害が想定されています。
 危険な開発から直ちに手を引くべきです。

2030年温室効果ガス削減目標50%に引き上げを

 船橋市は2050年までに温室効果ガス「実質ゼロ」を掲げましたが、2030年度までの削減目標は「13年度比で26%」と低いものです。国は4月に46%減を表明しています。
 2030年度は5割減にするよう市に求めました。市は「国の計画変更後に見直しを検討」と答えましたが、すでに長野県は6割減を表明しています。
 公共施設の電力を、石炭など化石燃料中心の東京電力から購入していることも問題です。東京都は一昨年、電力調達の入札時に「総合評価方式」で落札者を選び、都庁第1本庁舎の電力を再生可能エネルギー10割にしました。船橋市でも同様にと求めると、「研究したい」との回答でした。
 温暖化対策は待ったなし。直ちに目標を引き上げ、改善すべきです。

有権者の権利を守るため 投票所の環境整備を

 船橋市では、2021年の千葉県知事選挙から、期日前投票所が2箇所増えました。しかし、いくら利便性の高い場所に期日前投票所を増やしても、車がなかったり、長時間歩くことが困難な高齢者は、やはり投票に行きたくても行けない、選挙に参加できない状況は改善されません。「新たな民間施設の借り上げや、巡回バス・移動式期日前投票所の導入は可能ではないか」と質しました。選挙管理委員会事務局長からは、「民間借上については、コロナ収束後に検討。送迎や移動式期日前投票所は、山間部や投票所の統廃合に対する補完のためなので、今後研究していく」と3年前から進展のない回答でした。高齢化率が年々高まっています。市内全域の課題として、有権者の権利を守るため、投票所の環境整備が必要です。

小学校の近隣で警察の訓練に 土地を無償で提供?!

 2017年に市が買い上げた二和向台駅前の国家公務員宿舎跡地は、船橋北部地域に船橋駅前総合窓口センター(フェイスビル5F)並の機能を持たせ、児童ホーム、防災公園などをつくる為の土地です。
 しかし、未だ手付かずで荒れ放題の宿舎跡地を、警察に、訓練のために無償で貸していることが共産党の質問で明らかになりました。
 市は、「建物損壊がないか、月に1度、報告をしてもらっている」としながら、訓練の頻度や、内容も把握していませんでした。「小学校のすぐ前で、重装備の警官による訓練などは直ちにやめさせて、市民が活用できる公園などに整備することが市の役割であり、責任だ」と質しましたが、市長からは、「新しい生活様式に移る中で、跡地利用事業も検討する必要がある」との答弁でした。一日も早く市民が活用できるよう取り組みます。

子どもたちが安心して 成長できる学校に

共済は保護者負担ゼロに

 学校管理下で起きた児童生徒の負傷などに対する共済制度「日本スポーツ振興センター災害共済給付制度」は、市長が進めた行革により保護者の費用負担が生まれました。これに伴い、共済に加入しない児童生徒が出てきています。共済加入の保護者負担はゼロに戻すべきだと求めました。

給食費を無料に

 県内では8つの町で給食費が完全無料です。第3子から無料など一部補助がある自治体も10市町あります。船橋市でもまずは第3子以降を無料にすべきだと求めました。
 市は「他市と情報共有を図り、県の動向を注視したい」と否定しませんでした。引き続き給食費無料への声を上げていきます。

GIGAスクールで混乱

 学校ではiPadなどのICT器機1人1台端末を使った授業が始まりましたが、現場では混乱が生まれています。とりわけ、小学校の低学年では深刻です。
 小学校のiPadは市販のものと同様です。このiPadを使って「最初にパスコードを変更しよう」という授業をしようとしても「設定」のアイコンに書いてある文字は漢字です。教員が「設定をタップしてください」と言っても漢字が読めず伝わりにくいのです。iPadは漢字や英語の表示が多く低学年には大きな壁となっています。
 ICT器機を活用した授業に対し、市は週1回各校にICT支援員を派遣していますが、週1回では足りないという声が教員から寄せられました。各校に1人の支援員を配置すべきだと議会で求めました。
 市は「活用状況や学校の要望等を踏まえて検討していきたい」と答弁しました。改善が急がれます。

個人情報を丸ごと収集 危険な「土地利用規制法」

 正式名称は、「重要施設及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」、通称、「土地利用規制法」。6月16日未明の国会で、自民・公明・国民民主・維新等の賛成多数で可決しましたが、人権侵害が著しい、違憲の法律です。
主な内容は、
▽安全保障上重要とする施設の周囲1キロの範囲内で、土地や建物の所有、利用など、不動産取引の事前届けの義務付けを行うこと。
▽範囲内の住民が、重要施設等の機能を阻害する行為をすると、土地の利用制限、応じない場合は刑事罰が科される、などです。
 住民にどのような調査・規制を行うのか具体的なことは、政府の裁量に委ねられています。調査内容や範囲、期間、実施主体などの歯止めがなく、
氏名や住所、国籍、思想信条、所属団体、家族、交友関係、海外渡航歴など多岐に及ぶ可能性があります。地方自治体が個人情報を提供した場合、本人に知らせる必要もありません。
 習志野演習場周辺の住民からは、「我が家は対象になるのか」「阻害する行為の内容がわからない」など、不安が寄せられています。
 市民の不安に応えるために、市の対応を求めましたが「国の専管事項なので市では担当部署は設けない」と回答するだけでした。
 人権侵害に、行政が加担するのかそれとも守るのか、市の対応が問われます。

保育園にはならない「預かり保育」

 保育を必要とする3歳未満児を幼稚園で毎日預かる〝預かり保育幼稚園型Ⅱ〟が1園で開始される費用が予算化されました。待機児童解消策として国がつくった制度ですが、保育園や保育所に比べ施設も職員の配置も劣悪な基準が問題です。全国的に教育・保育施設での重篤事故が増加し、安全性の確保がより重要になっています。待機児を解消するためには認可保育園を増設することが船橋市の責任です。

 

船橋市議会 意見書(発議案)と主な陳情への態度


※船橋市議会では陳情も請願同様、委員会付託が原則でしたが、清風・公明・飛翔・新楓の議員により、付託省略という乱暴な運営が行われました。

共産:日本共産党(5人)、民主:市民民主連合(10人)、公明:公明党(9名)、自由:自由市政会(7人)、飛翔:飛翔(6人)、新楓:新楓(4人)、自民:自由民主党(3人)、清風:船橋清風会(3人)、無所属:(3人)、
は・小・今=議員の頭文字

退:退席、○:賛成、×:反対