あの街この町 No.235 2022年5・6月号

福祉を後退させ、海老川上流開発に
突き進む2022年度予算

 2022年度予算などを審議する第1回定例議会(2月15日から3月25日)が開かれました。
 市長から提案された予算では、国民健康保険料の一人5000円値上げや、母子家庭の高校生に支給してきた補助金をやめるなど、負担増や福祉が後退する一方で、財政状況が「改善した」と新たに70億円の基金積み立てが行われます。
 また、ハザードマップの浸水想定区域である海老川上流地区の民間開発のために医療センターの移転と新駅設置費用、開発補助金を支出し、開発事業を着工させようとする内容も盛りこまれています。
 日本共産党は予算の組み替え動議を提案、海老川上流開発への支出をやめ、市民生活や教育支援にまわすよう主張しましたが、賛成少数で否決されました。
 さらに会期中の3月4日、ロシアによるウクライナへの侵略を非難し、国際社会は即時撤収と速やかな平和の実現に全力を尽くすべきとする決議を船橋市議会の全会一致で可決しました。

日本共産党が予算の組み替えを提案

 日本共産党は市長の予算案に対し、市民の福祉増進とコロナ禍から暮らしを守る立場での予算組み替え動議を提案しました。船橋市の財政規模なら今すぐに実行可能な規模での提案です。
 国民健康保険料1人5千円の引き上げの中止、学校給食費の(日本共産党は完全無償化を目指しますが)第三子以降無償化をまずは実施する、子どもの医療費扶助を18歳まで拡大する、生理の貧困対策として学校のトイレ個室に生理用品を配置する、教員の多忙化解消、新型コロナ対策、ICT支援業務、カウンセリング業務などに学校が自由に活用できるスクール補助員制度を設ける、難聴高齢者の社会参加促進のため、補聴器購入費助成金の対象者拡大(収入要件無し)と助成額を10万円に拡大する、無駄で無謀な海老川上流地区土地区画整理事業への支出は中止するというものです。
 残念ながら日本共産党以外に賛成者は無く、組み替え動議は否決されましたが、引き続き住民の立場で声をあげていきます。

市民生活を苦しめる国民健康保険料の一人5000円値上げ

 4月から国民健康保険料の均等割を一人5千円値上げし、4万5560円から5万560円にする議案が市長から提案されました。これまでも船橋市は「行財政改革」だと言って、国民健康保険料を2018年度1500円、2020年度3千円値上げしています。国民健康保険に支出する市費をゼロにするため今後も保険料を2年ごとに値上げする方針です。
 国保加入世帯の88・61%が所得300万円未満で、所得水準が低い世帯が大半です。さらにコロナ禍やウクライナ侵攻の影響で物価上昇が続き、加入者の家計状況が厳しくなっているときに値上げなど言語道断です。
 今回、未就学児の保険料の均等割りを半額にする改正が行われていますが、本来、所得のない子どもは未就学児ばかりでなく未成年者すべてを対象に均等割りは無料にすべきで、まったく不十分な制度改正です。
 さらに、国民健康保険料の限度額を99万円から102万円に3万円(医療分2万円、後期高齢者支援分1万円)の値上げも行われました。中間所得層といわれる市民に冷や水を浴びせます。
 日本共産党は値上げに反対しましたが、多数で可決されてしまいました。

有価物・資源ごみ回収費(協力金)廃止の代替案を

 昨年末、市はいきなり関係団体に有価物・資源ごみ回収協力金廃止の通知をしました。町会、自治会、PTAなどでは協力金は貴重な収入源となっているため「いきなり言われても困る」「市に協力してきたのに酷いじゃないか」「廃止は困る」と怒りと困惑の声が多数寄せられ、廃止時期は半年間延長されることになりました。しかし、それ以降どうすればいいのか先が見通せない状況です。
 「この協力金が貴重な収入源になっていたことは確かであり、今後も円滑に町会、自治会、PTAなどの活動が続けられるように市として支えていく必要があるのではないか。丁寧に町会自治会、PTA等関係団体の意見を聞くべきではないか。関係団体への支援、代替案を早期に示すべきではないか」と質しました。
 市は「地域における必要な支援のあり方について、丁寧に意見を聞きながら検討していきたい」と答弁しました。

小中学校の給食無償化に向けて

 学校給食費は、一人当たり年間小学校で4万8千円から5万5千円、中学校で6万6千円と、子育て世帯にとって大きな負担です。千葉県内で無償化や減免が進んでいます。船橋市においても、給食無償化を求めました。これまで船橋市は「就学援助が認定されれば、給食費は免除している」とし、さらに財源を理由に「実施は難しい」としてきました。
 しかし、就学援助は全ての家庭が対象ではないこと、給食費未納世帯に対し、裁判に訴えるなど法的措置をとる件数が年々増えている事を示し「就学援助や法的措置では、子育て世帯の支援にはならない」と市を質しました。また「第3子以降の無償化であれば、7500万円の財源確保で実施が可能だ。中核市の中でも財政力豊かな船橋市なら実施できるはずだ」と質すと、市は「他市の様々な取り組みを調べ、検討している。国や県の動向をみているところ」だと答弁しました。一歩前進の答弁でしたが、国や県が動かなくても、「市長がやる」と決めれば給食無償化は実施できることです。今後も無償化に向け、取り組んでいきます。

海老川下流域の洪水リスクを増す盛土
市長の政治姿勢は豪雨対策に逆行

 海老川上流地区土地区画整理事業の市負担金などを含む予算が、賛成多数で可決されました。開発区域は海老川沿いの低湿地帯で、自然遊水地となっている地域です。そこに45万㎥(東京ドームの36%)もの盛土をし、市街化する計画です。下流域の洪水リスク増加は避けられません。
 賛成した自民党議員でさえ、保水・遊水機能の維持が必要と討論で述べざるを得ませんでした。事態は深刻です。
 市は国や県と協議の上、約5万3千㎥の調整池を区域内に造るから安全と述べますが、盛土量の1割でしかありません。
 また市は、区域の南に県が貯水容量55万㎥の海老川調節池を設置するから安全とも述べますが、設置は30年以上も先です。しかも海老川を1時間50㎜の降雨に対応させるという設置目的でしたが、盛土で不可能となります。
 1月の千葉県都市計画審議会でも下流域への影響が問題視され、市は5月に住民説明会を開く予定です。豪雨対策に逆行する市長の姿勢が厳しく問われます。

コロナでひっ迫の保健所職員を増員せず

 市内で新型コロナウイルス感染症患者の1例目が発表されたのは、2020年の3月1日でした。
 この発表以降2年間、船橋市の感染者数は、政令指定都市である千葉市を除くと、県内でもっとも感染者数の多い自治体として、推移してきました。
 こうした中で、感染対策の最前線で活動をしているのが船橋市保健所ですが、そこで働く職員は、異常な長時間労働が常態化しています。
 厚生労働省が過労死ラインの目安としているのは時間外労働が月80時間ですが、大幅に上回る状況は、依然として改善されていません。
 保健所には、今年1月以降第6波でも本庁など他職場から140人の応援職員を送りました。しかし、時間外労働が80時間を超える保健所職員は1月32人、2月30人、月に190時間になる職員も出ています。応援ではなく、職員を抜本的に増やすことが必要です。
 日本共産党は、引き続き、保健所職員の定数増を求めていきます。

第1回定例市議会 意見書(発議案)と主な議案・陳情への態度


共産=日本共産党(5人)、民主=市民民主連合(10人)、公明=公明党(9人)、自由=自由市政会(7人)、飛翔=飛翔(6人)、創風=創風ふなばし(6人)、新楓=新楓(4人)、無所属:(3人)、は・小・今=議員の頭文字
【 ○=賛成、×=反対 】